【年月日】2023年8月15日(火)~ 25日(金)
【山域、山名】ヨーロッパアルプス ヴァリスアルプス ビスホルン
【形態】アルパインクライミング
【メンバー】 西川と現地山岳ガイド
【報告者】西川
(2)モンテモロから続く
8/20(日) 快晴 チナールからトラキュイ小屋
4年前のダンブランシュと同じガイドのニキタ Nikita の車でザース・フェーを11時発。
12時半ごろチナールに着いた。村はずれに駐車して出発。スイスも温暖化して下界から登るのはかなり暑い。ビスホルンは易しい4000mとなっているが、上り2500mで楽ではない。しかもトラキュイ小屋までは1600mの長い登り、道は穏やかで小屋までは雪も全くないが、多くのアルプスの小屋でよくあるように最後は短い鎖場。登るにつれ樹林帯を越えアルプス4000m峰が多く見えてくる。どれも何十回も見ているのだが、チナールの谷は初めてでこの角度からの眺めが新鮮だ。トラキュイ小屋は新しいきれいな小屋で、食堂からダンブランシュ北壁、ダンデラン北壁、オーバーガーベルホルン北壁を望みながらの夕食。
【コースタイム】
チナール Zinal 1674m 12:40 -> トラキュイ小屋 Cab. de Tracuit 3256m 17:20
チナールからトラキュイ小屋への道
トラキュイ小屋
8/21(月) 快晴 トラキュイ小屋からビスホルン往復後下山
頂上までは登り900mで長くないのだが、起床・朝食2時半。フランス語圏の小屋で、私の他に日本人はいないが食堂に行くと日本語で『がんばれ』のメモが。3時過ぎ真っ暗な中出発。10分ほどモレーンの上を歩いて氷河上に出てアンザイレンする。ヘルメット、ピッケルは使わずポールのみ。クレバスを二段飛び、三段飛びして越えながら緩やかな氷河を延々と登り、傾斜は次第に急になり頂稜近くでやっと夜明けになった。稜線に出れば一登りでビスホルン頂上。
頂上からは何と言っても壮大壮麗極まるヴァイスホルン、ゲーデケ著「アルプス4000m峰登山ガイド」から引用すると『アルプスで(地球上でといってもよい)最も美しい山』のモルゲンロートが素晴らしい。ビスホルンはヴァイスホルンを眺めるために登るようなものか。しかしそれだけではなく、再度ゲーデケ本から『マットの谷を越えて東にミシャベル山群、南にはツェルマットの谷の終わりにある峰々(モンテ・ローザ、リスカム 筆者追記)、南西にはダンブランシュ。ヴァイスホルンを登るくらいのひとなら、みな知っている山ばかりだ。』の大展望。
往路を下山して、氷河の下部、小屋にもうかなり近くなってから登りの何パーティーかと交差した。昨夜の夕食で同じテーブルの人たちもいた。彼らは5時起床と言っていたから。トラキュイ小屋に戻ってしばらく休んでからチナールへの長い道を下り、車でザース・フェーへ戻った。
【コースタイム】
トラキュイ小屋 3256m 3:03 -> ビスホルン Bishorn 4153m 6:45/6:50 ->トラキュイ小屋 8:41/9:15 -> チナール 1674m 12:15
ビスホルン ルート図
アルプス最難関、息をのむほど美しいヴァイスホルン
左の稜線が一般ルート東稜 記録はこちら。右の稜線は北稜、中間部の突起はグラン・ジャンダルム。左奥はモンテ・ローザとリスカム。
ミシャベル山群西面
右からモンブラン、グラン・コンバン、ダンブランシュ
アルプスの王者ダンブランシュ
力強い山容はアルプス屈指の名峰。北壁は下界からはほとんど見れない。反対側一般ルートからの記録はこちら。
優美な稜線のチナールロートホルンだがクライミングは厳しい
8/22(火)~8/23(水) 快晴 レングフルー、プラッテン、フェルスキン、ホーザース
ザース谷ではホテルに泊まるとバス、ロープウェイの無料パスをくれるので、近辺の展望台を巡った。レングフルー Längflue、プラッテン Plattjen、フェルスキン Felskinn 、そして4000m18座が見渡せるホーザース Hohsaas、ここには18座の案内版の立っている周遊路がある。所要約1時間。
無料パスは泊り客だけでなく地域住民も持っているのだろう。バスに乗るのにチケットを見せたり、料金を払ったりしている人はいない。運行会社は大赤字のはずと思うが、どういう仕組みになっているのだろうか。
なおドイツ語ではSは濁音、Zは清音なので、サース・フェー、ホーサースではなくザース・フェー、ホーザースが正しい。昔の本は正しく書いてあったが、ネットで誰でもが書くようになって英語読みが独語読みを駆逐している。さらにVは清音、Wは濁音でこれも英語と逆。
レングフルー
プラッテン
フェルスキン
ミシャベル山群東面
中央がスイス国内最高峰ドーム Dom 記録はこちら
ホーザース
8/24(木) 快晴 ザース・フェー => フィスプ => ジュネーブ=>ドバイ
ザース・フェーを朝出発、快適なSBB(スイス連邦鉄道)に乗車してレマン湖の景色を愛でながら、結果を出しての帰り道はうれしいものだ。エミレーツ航空090便でジュネーブ空港を午後発。機窓から期待したモンブランも見えた。ドバイで乗り換え、ターミナル間の移動は電車利用でやはり長い。
モンブラン
8/25(金) 帰国
318便で夕方、成田に無事到着。コロナ禍で4年ぶりのアルプスだったが、ほぼ計画通りで岩も雪も楽しめた。これでアルプス4000m35座41回登頂。山の数え方は色々あるが、スイス4000m48座が有力なようなので、スイスはこれに沿って、スイス以外はゲーデケの旧本に沿って35座と数えている。
次は? いろいろ問題もあるが。この30年で日本は物価は上がっていないがスイスは2倍になり、円フラン相場も2倍になったので、2 x 2 = 4だから、スイスに行くとかつての4倍のお金が必要になる。また氷河の解け方は凄まじく、滅びゆく平家物語の世界を見るような気持ちになってしまう。自分も飛行機に乗って行っているのだから加担しているのだが。
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